版画における黒と白 地色と黒の関係
羽田智千代の描く世界
羽田智千代がこの奇妙な鳥のような虫のようなキャラクターが語る寓話的な木版画を始めてから20年余りになるという。たとえば浮世絵など、木版画には色版を使ったものもあるが、羽田は紙に墨色一色で世界を作り続けてきた。明暗のクリアなコントラストが、紙の地色と墨の漆黒の味わいを相互に引き立たせている。
作品に登場する鳥人聞は、自宅のイチイの生垣を刈り込んだ時に、切り落とされた太い枝が何かを訴えているように感じられて、その思いを版画にしようとしていたところ、その絵を見た孫娘が切り木口の年輪を見て「めんめ、めんめ」と言ったという。
その言葉で「年輪の目で表せば、樹の痛みを、もっと、もっと力強く、表情豊かに訴えることができるんだ」ということに」気づかされたという。その作品からこの表情豊かな鳥人間の活躍が始まったそうだ。
一見すると素朴な童話的な世界とも見えるものが、じつはその奥底で様々な人間の葛藤や社会の問題を語っているということを、鳥人間のまん丸の目は教えてくれている。
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